【産婦人科医が解説】さい帯とさい帯血について知っておくべきこと

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妊娠中、お腹の赤ちゃんと一心同体の証である「さい帯(へその緒)」。その役割や、出産時のトラブルについて不安に思っていませんか?また、「さい帯血」という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何ができて、保管すべきなのか悩んでいる方も多いでしょう。この記事では、産婦人科医の監修のもと、さい帯の基本的な役割から、多くの妊婦さんが心配されるさい帯巻絡などのトラブル、そして出産時にしか採取できないさい帯血の価値までを網羅的に解説します。さい帯血には再生医療にも応用される幹細胞が含まれており、その保管には、広く社会に貢献する「公的バンク」への寄付と、赤ちゃん本人や家族の未来に備える「民間バンク」での保管という選択肢があります。それぞれの違いや費用、選び方まで理解し、後悔のない選択をするためにお役立てください。

目次

さい帯とは 赤ちゃんとお母さんをつなぐ命綱

妊娠がわかったとき、多くの人が「へその緒」という言葉を耳にするでしょう。この「へその緒」の正式名称が「さい帯」です。さい帯は、お腹の中にいる赤ちゃんとお母さんの胎盤をつなぐ、まさに赤ちゃんにとって唯一のライフラインです。妊娠期間中、赤ちゃんが健やかに成長するために欠かせない、非常に重要な役割を担っています。

見た目は白く弾力のあるひも状で、赤ちゃんが子宮の中で自由に動けるように、羊水の中を漂っています。この章では、そんな「さい帯」が持つ大切な役割やその詳しい構造、そして妊娠から出産までの変化について、わかりやすく解説していきます。

さい帯の大切な役割と構造

さい帯の最も重要な役割は、胎盤を通じてお母さんから赤ちゃんへ酸素や栄養を届け、逆に赤ちゃんから出た二酸化炭素や老廃物をお母さん側へ運び出すことです。この絶え間ない物質交換によって、赤ちゃんは子宮の中で成長し続けることができます。

この重要な役割を支えているのが、さい帯の特殊な構造です。さい帯は、主に3本の血管と、それらを保護する「ワルトン膠質(こうしつ)」というゼリー状の組織でできています。

  • 3本の血管:さい帯の中には、「さい帯静脈」が1本と、「さい帯動脈」が2本通っています。一般的に「静脈」は二酸化炭素が多い血液、「動脈」は酸素が多い血液が流れていますが、さい帯ではその役割が逆になるのが特徴です。
  • ワルトン膠質:3本の血管の周りをたっぷりと満たしている、プルプルとしたゼリー状の物質です。これがクッションの役割を果たし、外部からの圧迫やねじれから大切な血管を守っています。赤ちゃんが子宮の中で動き回っても、血流が簡単には途絶えないのは、このワルトン膠質のおかげなのです。

さい帯内の血管の役割をまとめると、以下のようになります。

血管の種類本数血液の流れ主な役割
さい帯静脈1本胎盤 → 赤ちゃん酸素と栄養を豊富に含んだ血液を赤ちゃんに送る
さい帯動脈2本赤ちゃん → 胎盤赤ちゃんから出た二酸化炭素や老廃物を含む血液を胎盤に戻す

妊娠から出産までのさい帯の変化

さい帯は、妊娠の経過とともに赤ちゃんの成長に合わせて変化していきます。妊娠初期に形成され始め、週数が進むにつれて長く、そして太くなっていきます。

妊娠後期になると、さい帯の長さには個人差が大きくなりますが、平均的には約50cmから60cm、太さは直径約1.5cmから2cmほどにまで成長します。多くの場合、さい帯は自然にねじれ(螺旋)ていますが、このねじれが強度を高め、引っ張られたり折れ曲がったりすることへの抵抗力を生んでいると考えられています。

そして出産を迎えると、赤ちゃんが自力で呼吸を始め、肺が機能し始めます。これにより、さい帯を通じた酸素供給の役割は終わりを告げます。通常、出産後しばらくしてさい帯の拍動が自然に止まったのを確認してから、クランプという器具で留められ、切断されます。こうして、お母さんと赤ちゃんをつないでいた命綱は、その大役を終えるのです。

知っておきたいさい帯のトラブルと対処法

知っておきたい さい帯のトラブル図解 さい帯巻絡(さいたいけんらく) 首や体に巻きつく(最も多い) クッション(膠質)で守られている 真結節(しんけっせつ) さい帯が結ばれてしまう さい帯卵膜付着 胎盤ではなく卵膜に付着 胎盤 卵膜 ! 前置さい帯血管 血管が子宮口を塞いでいる 子宮壁 子宮口(出口) 赤ちゃんの通り道

さい帯は赤ちゃんの成長に欠かせない大切な命綱ですが、妊娠中や分娩時にトラブルが起こることもあります。妊婦健診の超音波(エコー)検査でさい帯の異常を指摘され、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その多くは適切な管理によって無事に出産を迎えることができます。ここでは、代表的ないくつかのトラブルとその対処法について、正しく理解していきましょう。

さい帯巻絡 赤ちゃんへの影響は

さい帯巻絡(さいたいけんらく)とは、さい帯が赤ちゃんの首や体、手足に巻きついている状態のことです。妊婦健診で指摘されることが最も多いさい帯のトラブルで、全妊婦さんの20~30%程度にみられると言われています。赤ちゃんが子宮の中で活発に動き回ることで自然に起こる現象であり、決して珍しいことではありません。

「首にへその緒が巻きついている」と聞くと、赤ちゃんが苦しいのではないかと心配になりますが、ほとんどの場合、赤ちゃんへの大きな影響はありません。その理由は、さい帯の中にある「ワルトン膠質」というゼリー状の物質がクッションの役割を果たし、血管が圧迫されて血流が簡単に途絶えるのを防いでいるためです。お腹の中の赤ちゃんは肺で呼吸しているわけではないので、首に巻きついても窒息することはありません。

ただし、ごくまれに分娩が進行する過程でさい帯が強く圧迫され、一時的に血流が悪くなることがあります。その場合、胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんの状態を注意深く監視し、もしものときには急速遂娩(きゅうそくすいべん)や緊急帝王切開など、迅速かつ適切な対応をとりますのでご安心ください。妊婦さん自身ができる特別な予防法や対処法はありませんが、胎動が普段より極端に少ない、または全く感じないなどの変化があれば、すぐに産院へ連絡することが大切です。

その他のさい帯異常(真結節・卵膜付着など)

さい帯巻絡以外にも、頻度は低いものの注意が必要ないくつかの異常があります。これらの多くも超音波検査で発見され、分娩方法などを慎重に検討することで、安全な出産を目指します。

異常の種類どのような状態か考えられるリスクと対処法
真結節(しんけっせつ)さい帯自体が固く結ばれて、結び目ができてしまう状態。赤ちゃんが動き回る過程で偶然できてしまいます。結び目がきつく締まると血流が途絶える危険性がありますが、発生頻度は非常にまれです。分娩時に注意深い胎児心拍数モニタリングを行います。
さい帯卵膜付着(らんまくふちゃく)通常は胎盤の中央付近に付着するさい帯が、胎盤の端にある卵膜という薄い膜に付着している状態。さい帯の血管がワルトン膠質に十分に保護されていないため、破水や分娩の際に血管が損傷・圧迫されやすいリスクがあります。計画的な帝王切開が選択されることがあります。
前置さい帯血管(ぜんちさいたいけっかん)さい帯の血管が子宮口の内側を覆うように走行している状態。卵膜付着などに伴って起こることがあります。経腟分娩の際に赤ちゃんが通ることで血管が圧迫されたり、破水時に血管が破れて大量出血したりするリスクが非常に高いため、診断された場合はほぼ全例で予定帝王切開が選択されます。
単一臍帯動脈(たんいつさいたいどうみゃく)通常は2本ある臍帯動脈が1本しかない状態。比較的よくみられる異常です。これ単独では大きな問題にならないことが多いですが、心臓や腎臓などの他の奇形を合併している可能性も考慮し、より詳細な超音波検査を行います。

これらのさい帯異常は、妊婦さん自身が何かをしたから起こるものではありません。大切なのは、妊婦健診をきちんと受診し、医師による適切な周産期管理のもとで出産に臨むことです。もし異常を指摘されても過度に心配せず、担当の医師や助産師の説明をよく聞き、不安な点は何でも質問するようにしてください。

さい帯血とは 未来の医療を支える貴重な血液

さい帯血の仕組みと未来の可能性 赤ちゃんが生まれる瞬間にだけ採取できる「命の宝物」 さい帯血 (へその緒と胎盤の血液) 造血幹細胞 血液の成分を作り出す (赤血球・白血球・血小板など) 主な治療対象(現在) 白血病(急性・慢性) 再生不良性貧血 悪性リンパ腫 先天性免疫不全症 「造血幹細胞移植」として確立 間葉系幹細胞 組織や臓器を修復する (神経・筋肉・骨・軟骨など) 期待される再生医療(未来) 脳性まひ・脳症 自閉症スペクトラム障害 脊髄損傷 1型糖尿病 臨床研究が進行中 ※治療効果や研究段階は疾患により異なります

さい帯血とは、出産後に赤ちゃんのさい帯(へその緒)と胎盤の中に残っている血液のことです。かつては出産後に処分されていましたが、現在ではその医学的価値が広く知られるようになりました。なぜなら、この血液には体の様々な組織や臓器になる前の「もとの細胞」である「幹細胞(かんさいぼう)」が豊富に含まれているからです。この幹細胞は、将来の病気の治療に役立つ可能性があるため、さい帯血は「命の宝物」とも呼ばれています。採取できるのは、赤ちゃんが生まれてくる、その一度きりの瞬間だけ。そのため、妊娠中からさい帯血について知り、どう扱うかを考えておくことが大切です。

さい帯血に含まれる幹細胞とその可能性

さい帯血の価値を特別なものにしているのが、含まれている2種類の幹細胞です。

一つは「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」です。これは、私たちの血液成分である赤血球、白血球、血小板など、すべての血液細胞を作り出す大もととなる細胞です。骨髄移植が有名ですが、さい帯血移植もこの造血幹細胞を患者さんに移植することで、正常な血液を作れるようにする治療法です。さい帯血に含まれる造血幹細胞は非常に若く増殖能力が高いため、拒絶反応が起こりにくいといったメリットがあります。

もう一つは「間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)」です。この細胞は、骨や軟骨、脂肪、筋肉、神経細胞など、さまざまな種類の細胞に変化(分化)する能力を持っています。この能力を活かし、傷ついた組織や臓器の機能を修復する「再生医療」への応用が世界中で期待され、研究が進められています。造血幹細胞とは異なり、自分以外の人の細胞を移植しても拒絶反応が起こりにくいという特性も持っています。

さい帯血で治療できる病気

さい帯血は、すでに確立された治療法から未来の医療まで、幅広い可能性を秘めています。現在、公的さい帯血バンクに保管されているさい帯血は、主に白血病などの血液の病気を治療するための「造血幹細胞移植」に利用されています。具体的には、以下のような病気が治療の対象となります。

疾患の分類代表的な疾患名
血液悪性腫瘍急性白血病、慢性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンPA腫など
非悪性血液疾患再生不良性貧血、ファンコニ貧血、サラセミアなど
先天性免疫不全症重症複合免疫不全症、ウィスコット・オルドリッチ症候群など
先天性代謝異常症副腎白質ジストロフィー、ゴーシェ病、ムコ多糖症など

さらに近年では、さい帯血を用いた再生医療・細胞治療の研究が飛躍的に進んでいます。特に、脳性まひや低酸素性虚血性脳症といった脳の障害、自閉症スペクトラム障害、脊髄損傷、1型糖尿病など、これまで有効な治療法がなかった病気に対する臨床研究が行われ、その効果が期待されています。これらの治療はまだ研究段階のものが多いですが、さい帯血が未来の医療を切り拓く大きな可能性を秘めていることを示しています。

さい帯血を保管するという選択肢

さい帯血バンク 2つの選択肢 さい帯血 公的さい帯血バンク 「社会貢献・寄付」 目的 第三者の患者さんへ提供 費用 無料 所有権 バンクに帰属 使用 自分・家族は使えない 民間さい帯血バンク 「わが子のための保険」 目的 自分・家族の病気に備える 費用 有料 (初期+保管料) 所有権 本人・家族 使用 必要な時に利用可能

出産時にしか採取できない「さい帯血」。この貴重な血液を、将来の病気の治療に備えて保管しておく「さい帯血バンク」という選択肢があります。さい帯血バンクには、大きく分けて「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」の2種類があり、それぞれの目的や仕組みが大きく異なります。どちらを選ぶかは、ご家庭の考え方や価値観によって決まります。まずは、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。ここでは、さい帯血の保管について詳しく解説します。

さい帯血バンクの種類と違い

公的さい帯血バンクと民間さい帯血バンクは、目的、費用、所有権など、多くの点で異なります。どちらのバンクを選ぶか検討するために、まずはその違いを明確に把握しておきましょう。主な違いを以下の表にまとめました。

項目公的さい帯血バンク民間さい帯血バンク
目的白血病などの患者さんの治療のために、広く一般(第三者)へ提供する(寄付)赤ちゃん本人やその家族の将来の病気に備えるために保管する
所有権提供後は公的バンクに帰属し、提供者(本人・家族)は使用できない保管依頼者(本人・家族)にある
利用対象さい帯血を必要とする不特定多数の患者さん赤ちゃん本人、またはその兄弟姉妹など(血縁者)
費用無料(寄付のため)有料(初期費用+保管費用)
提携医療機関提携している産科施設のみで採取可能全国ほとんどの産科施設で採取可能

多くの人を救う公的さい帯血バンク

公的さい帯血バンクは、さい帯血を「寄付」という形で集め、白血病や再生不良性貧血など、血液の病気に苦しむ患者さんのために役立てることを目的としています。提供されたさい帯血は、骨髄バンクと同様に、適合する患者さんが現れた際に移植治療のために使われます。費用はかからず、誰かの命を救うことができる社会貢献としての意義が非常に大きい選択肢です。ただし、一度寄付すると、そのさい帯血の所有権はバンクに移るため、将来ご自身のお子さんやご家族のために使うことはできなくなります。また、採取できる産院が限られているため、希望する場合は事前に出産予定の病院が提携施設であるかを確認する必要があります。

わが子と家族のために備える民間さい帯血バンク

民間さい帯血バンクは、ご自身のお子さんとその家族の将来の病気に備えることを目的としています。契約者から費用を預かり、そのご家族のためだけにさい帯血を長期間にわたって保管します。最大のメリットは、赤ちゃん本人やそのご家族(兄弟姉妹など)が必要としたときに、いつでも利用できることです。本人由来の幹細胞であるため拒絶反応のリスクが極めて低く、現在は治療法が確立されていない病気に対しても、再生医療の進歩によって将来的に活用できる可能性が期待されています。いわば、わが子のための「命の保険」のような存在と言えるでしょう。

民間バンクでのさい帯血保管のメリットとデメリット

民間バンクでの保管を検討する際には、メリットとデメリットの両方を十分に理解した上で判断することが重要です。

メリットとしては、まず「赤ちゃん本人や家族が使える」という安心感が挙げられます。万が一、将来さい帯血移植が必要な病気にかかった場合、ドナーを探す時間や手間をかけることなく、拒絶反応の少ない自己の細胞を治療に利用できます。また、再生医療分野での研究が進むにつれて、脳性麻痺や自閉症スペクトラム障害などへの臨床研究も行われており、将来的な治療の選択肢が広がる可能性も期待されています。

一方、デメリットとしては高額な費用がかかる点が挙げられます。初期費用と長期の保管費用を合わせると、決して安い金額ではありません。また、さい帯血が実際に治療で使われる確率は、現時点では非常に低いのが実情です。さらに、採取したさい帯血の細胞数が基準に満たない場合など、必ずしもすべてのさい帯血が保管・利用できるわけではないという点も理解しておく必要があります。

さい帯血の保管にかかる費用

民間さい帯血バンクで保管する場合、費用はバンクや契約プランによって異なりますが、一般的には「初期費用」と「保管費用」の2つで構成されています。

初期費用は、さい帯血を採取するためのキット代、輸送費、検査費用、細胞分離・処理費用などを含み、おおよそ20万円~25万円程度が目安です。この費用は、契約時に一括で支払うのが一般的です。

保管費用は、凍結したさい帯血を維持・管理するための費用で、支払い方法にはいくつかのプランがあります。例えば、「10年間」や「20年間」といった期間で一括払いするプランや、毎年保管料を支払う年払いプランなどがあります。長期の一括払いプランの方が、年払いを続けるよりも総額が割安になる傾向があります。ご家庭のライフプランや予算に合わせて、最適なプランを選択することが大切です。

さい帯血バンクの選び方 ステムセル研究所の例

民間さい帯血バンクへの保管を検討する際、どのバンクを選べば良いか迷う方も多いでしょう。さい帯血は、わが子の将来のために何十年にもわたって保管する可能性がある大切な資産です。そのため、バンク選びで最も重要なのは、長期にわたる安定した保管体制と、高い品質管理基準を満たしているかという点にあります。

ここでは、具体的な選び方のポイントを、国内最大手の民間さい帯血バンクである「ステムセル研究所」を例に挙げて解説します。

保管実績と信頼性で選ぶ

さい帯血バンクの信頼性を測る上で、客観的な指標となるのが「保管実績」と「企業の安定性」です。

まず、保管実績については、これまでにどれくらいのさい帯血を保管してきたかという累計保管数が一つの目安になります。多くのご家庭から選ばれているという事実は、それだけ信頼が厚いことの証左と言えるでしょう。ステムセル研究所は、国内の民間さい帯血バンクにおいてトップクラスのシェアを誇り、豊富な保管実績を持っています。

次に、企業の安定性です。さい帯血は数十年という長期間にわたって保管を委託するため、バンクを運営する企業が安定して事業を継続できるかどうかが極めて重要になります。企業の経営状況を確認する指標として、株式上場の有無は一つの判断材料となります。ステムセル研究所の運営会社は東京証券取引所に上場しており、社会的な信用度や経営の透明性が高いと考えられます。

さらに、高品質な保管環境が維持されているかも確認すべきポイントです。さい帯血に含まれる幹細胞は、-150℃以下の超低温環境でなければ品質を維持できません。ステムセル研究所では、停電時にも万全なバックアップ電源を備えた大型の液体窒素タンクで、-196℃の環境で細胞を保管しており、災害時など不測の事態にも対応できる徹底した品質管理体制を整えています。

申し込みから保管までの流れ

実際にさい帯血を保管する場合、どのような手順を踏むのでしょうか。一般的な申し込みから保管開始までの流れを理解しておくと、出産準備と並行してスムーズに進めることができます。

多くの民間バンクでは、妊娠中のできるだけ早い段階で資料請求を行い、出産予定日が決まったら申し込むのが一般的です。特に、申し込みには期限が設けられている場合が多いため、早めに検討を開始することをおすすめします。

以下に、ステムセル研究所を例とした一般的な流れをまとめました。

ステップ内容ポイント
1. 資料請求・検討ウェブサイトや電話で資料を請求し、サービス内容や費用を確認します。契約内容やオプションについて不明点があれば、この段階で問い合わせて解消しておきましょう。
2. 申し込み・契約オンラインまたは郵送で申し込み手続きを行います。出産予定日の数週間前までなど、申し込み期限が設定されていることが多いので注意が必要です。
3. 採血キットの受け取り契約が完了すると、さい帯血を採取するための専用キットが自宅に届きます。出産時に必ず病院へ持参する必要があるため、入院バッグなどに入れて忘れないように準備します。
4. 出産・採取出産時に、産院の医師や助産師にキットを渡し、さい帯血を採取してもらいます。事前にさい帯血保管の希望を産院に伝えておくとスムーズです。提携医療機関であるかも確認しておきましょう。
5. 回収・輸送出産後、バンクに連絡すると、専門の業者が病院までさい帯血を回収に来ます。温度管理された状態で、速やかに研究所へ輸送されます。
6. 検査・保管研究所で細胞数や感染症の有無などを検査し、基準を満たしたさい帯血が長期保管されます。検査結果は後日報告され、無事に保管が開始されると保管証などが発行されます。

このように、申し込みから実際の採取、保管まではシステム化されており、妊婦さん自身に大きな負担がかかることはありません。しかし、出産という特別な瞬間に備えるためにも、全体の流れを把握し、計画的に準備を進めることが大切です。

出産時のさい帯の扱いと最新の考え方

赤ちゃんが誕生し、産声を聞いた後に行われる処置のひとつに「さい帯の切断」があります。かつては生まれてすぐにさい帯を切るのが一般的でしたが、近年その考え方は変化しつつあります。赤ちゃんのその後の健康にも影響を与える、さい帯を切るタイミングについての最新の知見と、出産時に知っておきたいポイントを解説します。

さい帯を切るタイミングと赤ちゃんへの影響

出産後、さい帯はすぐには切らず、しばらく拍動が続いています。この間、胎盤に残っていた血液がさい帯を通じて赤ちゃんへと流れ込みます。この胎盤からの血液移行を待ってからさい帯を切断する方法を「遅延さい帯結紮(ちえんさいたいけっさつ)」または「Delayed Cord Clamping(DCC)」と呼びます。これに対し、出生後すぐに(通常1分以内に)切断する方法を「早期さい帯結紮(そうきさいたいけっさつ)」と言います。

近年、WHO(世界保健機関)や日本産科婦人科学会は、母子の状態が良好な正期産児に対して、出生後少なくとも1分以上待ってからさい帯を切断するDCCを推奨しています。これは、胎盤から移行する血液が赤ちゃんにとって多くのメリットをもたらすことが、数々の研究で明らかになってきたためです。

遅延さい帯結紮(DCC)のメリットとデメリット

DCCには、赤ちゃんにとって多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。メリットとデメリットを正しく理解し、ご自身の出産にどう取り入れたいかを考えることが大切です。主なメリットとデメリットを以下にまとめました。

DCCのメリットDCCのデメリット・注意点
鉄分の貯蔵量が増加する
胎盤血には鉄分が豊富に含まれており、生後数ヶ月間の鉄欠乏性貧血の予防につながります。
高ビリルビン血症(新生児黄疸)のリスクがわずかに上昇する
赤血球が多くなることで、その分解物であるビリルビンが増え、黄疸が強く出ることがあります。場合によっては光線療法が必要になります。
循環血液量が増え、血圧が安定する
特に早産児や低出生体重児において、循環動態が安定する効果が期待されます。
多血症のリスク
赤血球が過剰になる状態で、まれに呼吸障害や哺乳不良の原因となることがあります。
早産児における脳室内出血や壊死性腸炎のリスクを低減させる
未熟な赤ちゃんを重篤な合併症から守る効果が報告されています。
さい帯血保管ができない場合がある
さい帯血バンクを利用する場合、DCCを行うと採取に必要な血液量を確保できない可能性があります。

さい帯血保管を希望する場合の注意点

DCCの考え方が広まる一方で、注意しなければならないのが「さい帯血保管」との関係です。さい帯血のプライベートバンク(民間バンク)での保管を希望する場合、幹細胞を一定量確保するために、ある程度の血液量が必要となります。

DCCを行うと、胎盤血の多くが赤ちゃんに移行するため、さい帯血の採取量が基準に満たなくなる可能性が高くなります。そのため、さい帯血の保管を優先する場合は、DCCを行わずに早期さい帯結紮を選択する必要があります。どちらを優先するかは、ご家族の考え方や価値観によって異なります。妊娠中にDCCとさい帯血保管についてご夫婦でよく話し合い、かかりつけの産婦人科医や助産師に相談しておくことが非常に重要です。

まとめ

この記事では、赤ちゃんとお母さんをつなぐ命綱である「さい帯」の役割や構造、そして妊娠中から出産までの変化について解説しました。さい帯巻絡などのトラブルは不安に感じやすいですが、その多くは赤ちゃんに大きな影響を与えないことを理解し、心配な点はかかりつけの産婦人科医に相談することが大切です。

また、出産時にしか採取できない「さい帯血」には、再生医療や難病治療の鍵となる幹細胞が豊富に含まれています。この貴重なさい帯血を、広く社会に貢献する「公的さい帯血バンク」へ寄付するか、わが子や家族の将来のもしもに備えて「民間さい帯血バンク」で保管するかは、ご家庭で検討すべき大切な選択肢です。

民間バンクでの保管を検討する際は、メリット・デメリットや費用を十分に理解した上で、ステムセル研究所のような長年の保管実績を持つ信頼できる機関を選ぶことが、後悔しないための重要なポイントとなります。さい帯とさい帯血の正しい知識が、皆さまにとって納得のいく出産準備の一助となれば幸いです。

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株式会社ステムセル研究所

詳細情報

〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目21−19 東急虎ノ門ビル 2階

URL:https://stemcell.co.jp/

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